ブロ愚

日々徒然と妄想文

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結局

文庫にすることにしました。カバー下は↑これ。これをスターライトドリームゴールドっていう金色の紙に刷って貰います。P3の方のも同じデザイン。(紙は青系のものに変えるけど)
見た目はたぶん綺麗になるけど紙が薄いのがちょっと懸念ポイント? 88kgだからなあ……(いつも使ってるのは180~200の紙)
しかし装丁考えるの楽しい。刷り上りたのしみだなー

続きから原稿の一部。花村と主人公が喋るとこ。






主人公:的場 修司(まとば しゅうじ)




「うぇっ!? ちょ、あい……的場! どうしたんだよそれ!?」
 聞き慣れた声を素っ頓狂に上下させながら、目を白黒させている友人――花村陽介の姿を確認して修司は目を細めた。
 朝の教室でお喋りに興じていたクラスメイトの数人が振り向いたが、すぐに視線を戻してくすくすと何かの噂話を始める。
「ハイカラだろう」
「ハイカラだろうじゃねーよ! ダサいとか格好イイとかそういう問題じゃないだろ!」
 黒いセーラー襟の下に結ばれた黄色いスカーフ、そして折り目のきっちりとした千鳥格子のスカート。修司が今着ているものは彼が通う八十神高校の女子生徒用制服だ。
「どしたの? 罰ゲームなの? 里中とか天城あたりに何か仕組まれた?」
「そういう訳ではない。なんだ、似合わないか」
「だから似合うとか似合わないとかそういう問題じゃ……」
 ふうとため息を吐いた陽介がカッと目を見開く。
「って自主的に着てんのかよ!?」
「ハイカラだろう」
「ループっ!」
 頭を抱え膝から崩れ落ちる陽介を後目に、修司は悠々と脚を組み直す。すらりとした脚が流線を描くのに一瞬見とれてしまった陽介は慌てて首を振り、這いずるように修司の後ろにある自分の席に着いた。
「文化祭の時にも思ったけど、よく女子はこんな頼りない布切れ履けるな」
 陽介の机に肘をつきながら、修司は腰まである二つの三つ編みの片方を弄ぶ。自前の髪ではなくウィッグだ。毛先をまじまじと眺めながら、去年の文化祭であった女装ミスコンの時にしたものと全く同じ格好をしていることを不思議に思った。あのときとはもう、色々なものが違うというのに。
「お前下にジャージ履いてたからまだいいだろ。俺なんかミニスカだったっての」
「今は履いてない。見る……?」
「だーっ! 見ません! しまって!」
 スカートの端を摘んでゆっくりめくり上げる修司の手を、席から乗り出した陽介が慌てて押さえる。少しだけ変わった友人の、変わらない反応に修司はくつくつと笑う。
「ご近所で噂になっても知らねーぞ」
「平気平気。みんなテレビの話しかしないから」
「あー……そうね」
 陽介が教室の隅に視線をやる。端から見れば楽しそうな談笑。どこにでもある風景。そこに狂気が渦巻いていることに本人たちは気づかない。
 テレビでやってた。テレビが言ってた。テレビの、テレビは、テレビを。彼らはただひたすらに画面を見つめ、翌日顔を合わせてその話ばかりしている。あらゆる情報の源と見なし、テレビに依存して生きている。
 もっとも、町単位の狂気だ。現状に違和感を抱いているものは修司たち以外にもいないことはないが、圧倒的に数が少ない。むしろ町からすれば自分たちが狂人なのだろうと修司は思う。
「まあ、でもさ」
 すっきりしたとはとても言えない、疲れた目をして陽介が笑う。
「平和になってよかったよ」
 そうだ。この町は平和になった。たとえ霧に飲まれたとしても、町中がテレビに依存しても、物騒なニュースが町を騒がせることはない。連続殺人事件に怯える必要はなくなった。修司たちが事件を『終わらせた』のだから。
「な、的場」
「……うん」
 それでも陽介はもう、修司を相棒と呼ぶことはない。


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