ブロ愚

日々徒然と妄想文

スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
1/31 PM26:00
続きから荒垣さん生存ifで2月1日になった話。1200くらい。勢いで書いたのでちょっと変かもしれない
1月31日の夜はやっぱりなんだか不思議な感じがしますね








そらをゆびさす



「あれは何?」
「北極星。ポラリス」
 指先の星を見て、低い声がそっけなく答える。月は生まれ変わったように明るく、煌々と世界を照らしていて電気が点いていなくても相手の顔がよく見えた。
「なんだその顔」
「答えられると思わなくて。星、詳しいんですね」
「北極星ぐらい誰でも知ってるだろ」
「俺は知りませんでした。先輩って意外とロマンチストなんだ」
 思わず頬を吊り上げると、抗議なのか布団から足を出してわき腹を小突いてきた。ひどい、暴力だ、と少しの間笑ってじゃれあう。
「先輩の星はどこにあるんです」
 そう言いながらベッドで寝転がる先輩の上に半ば圧し掛かる体勢で横になった。今日は元々自分の部屋に戻るつもりなんてなかった。胸の上に顔を乗せる俺を彼は呆れ交じりの眼差しで見て、諦めたのか俺にも布団を被せる。
「カストールはもっと明け方にならねえと見えやしねぇよ」
「じゃあ、それまで起きてよう」
「とっとと寝ろ」
 ちぇー、とぼやきながら頭まで布団に入ろうとしたら、不意に先輩のひんやりした指が首筋に触れる。首から肩に、背中に。それから頬に。ここにいることを確認するような、彼にしてはたどたどしい手つきで。
「せんぱい?」
「オメーは本当、人の気持ちも知らねえで……」
 抱き締める腕に篭る力はいつもよりずっと強くて、痛いですよなんて笑ってみるけど先輩はにこりともしてくれない。
「ウロチョロされると迷惑なんだよ」
「はい」
「ここで、じっとしてろ」
 はい、とは言えなかった。頷けばそれはやがて嘘になることを知っていたから。答える代わりに、こめかみを胸に摺り寄せた。
「全部忘れるのに」
 矛盾の無いように調整される世界なら、影時間の消えた今、タルタロスが無ければ繋がりを持てなかった俺たちの関係は白紙に返る。眠って目を覚ましたとき、先輩はもう俺のことを覚えてはいないだろう。俺もまた同じように記憶を失うはずだ。
「そしたら、また一から始めりゃいい。お前と寝るのも、あれは何の星だって訊かれるのも」
「今度は好きにならないかもしれませんよ」
「なる。記憶が無くなったって、人格が変わる訳じゃねえだろ」
 目尻を彼の指が拭う。断定されてしまったことがなんだかおかしくなってきて、声に出さずに笑った。
「やっぱり、ロマンチストですね」
「……うるせえ」





「あれは何?」
「北極星。ポラリス」
 指先の星を見て、低い声がそっけなく答える。空の端に夕焼けの残滓があるだけで、あたりはすっかり濃紺に色を変えている。隣を歩くその人は、俺の表情を見て小さく笑う。
「なんだその顔」
「答えられると思わなくて。星、詳しいんですね」
「北極星ぐらい誰でも知ってるだろ」
「俺は知りませんでした。先輩って意外とロマンチストなんだ」
 思わず頬を吊り上げると、抗議なのか額を小突いてきた。ひどい、暴力だ、と少しの間笑ってじゃれあう。
「先輩、あれは?」
「シリウス。ベテルギウスとプロキオンで冬の大三角」
「えっ、本当に詳しい! じゃあじゃあ、あれは――」
 繋いだ手をぎゅっと握りあって、暫くふたり、遠い宇宙を見上げていた。


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。