ブロ愚

日々徒然と妄想文

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62億分の1
更新までのお茶濁しにひっそり書いてる280の荒垣さん視点の話……の最初の部分。冒頭も冒頭なので主人公は出てきませんw 1400くらい、続きからどうぞ。
そういえば「280万秒と、少し。」のタイトルには元ネタがあって、「3150万秒と、少し」という舞台なんですが私が観たのとは別の劇団が今度やるみたいです。(これ)観に行こうかなぁ。

舞台版ライチ観に行ってきました。演出が色々凝ってて面白かったですが全体的にコメディ方面に寄ってるので漫画そのものの雰囲気を期待して行くとちょっとがっかりすると思います。
カノンの子はイメージそのまんまでした。まさしくカノン。ジャイボも良かったな。ゼラはゼラというより4コマの常川くんだった……w









 まだ十にも満たない年齢の頃、この人工島は殆ど更地だった。
 何も無い広い土地は子供にとって天国のようなもので、駆け回り転げまわり、飽きることは決してなかった。更地と言っても開発計画はそれなりに進んでいて、毎日あちこちで工事の音が聞こえるくらいだったのに、自分たちだけの王国がそこにあるような気がしていた。考えてみれば真っ先に出来たのが孤児院というのも変な話なのだが、それも自分たちだけの世界だというイメージを作るのに買っていたかもしれない。
 どれだけ幼かったとしても、自分が世間一般と違うことは理解していた。俺は――"俺たち"はいつでも胸の内に孤独と疎外感を飼っていて、それを癒せるのはこの仲間たちこそが家族なのだと信じることだけだと知っていた。だから信じた。
 消去法でも何でもなく居場所はひとつしかなかった。狭い島に仮託したネバーランド。たとえそれが大人が見れば笑ってしまうような、吹けば飛ぶようなあまりに小さい箱庭だったとしても、そこが現実だった。
「ねえシンジ、しってる?」
 遊びと遊びの間のほんの少しの休憩は、積み上げられた資材の上に腰掛けてとることが多かった。あの頃はまだ手を伸ばせばつきそうなくらい地面が近く、空を求めるように高いところへ登りたがった。絵本の中のティンカーベルを夢見ても、実在するはずもない。
「なにを」
「あのね、この"せかい"には――」
 美紀がふたつに結った髪を揺らしながら大きく手を広げる。それで世界の端から端まで手が届くと信じて疑わないような、そんな素振りで。

「"ろくじゅうにおく"も、人がいるんだって!」

 理解すら出来ない、おとぎ話の数字。それをまだ十さえ数えられない少女の口から出たことが、不思議でたまらなかった。面白くなかったと言ってもいい。子供にとっての一年はあまりに長く、ひとつ年下というだけで自分よりもずっと幼く感じていた。だと言うのに、美紀は俺よりも遠い世界を見ていることに悔しさを覚えた。
「じゃあさ、そのなかに、オレがすきになる人もいるのかな?」
 感情をストレートに表に出せるほど素直な子供じゃない俺は、神を仰ぐように逆光の少女を見上げた。
「いるよ。シンジのおよめさんになるこ、いっぱいいるよ!」
「いっぱいいたら、こまるって……」
 苦笑いを浮かべる俺を見て、ませた仕草でくすくすと笑う。
 その夏の午後、世界の中心は間違いなくここに在って、一年の後に王国はあっけなく崩壊した。
 たった62億分の1が喪われたところで地球は真っ二つにもならない、朝が来なくなったりもしない。めでたしめでたしの文句も無ければスタッフロールも流れない。美紀が死んで学んだことはそれくらいで、後には記憶と心に傷を負った幼馴染が残るだけだった。


62億分の1


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