ブロ愚

日々徒然と妄想文

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わーすt(ry
本編ではなく幕間です。一回消えたので心の涙を流しつつ書き直しました。
いつかどこかでした会話。1300くらい。続きから。


拍手下さった方々ありがとうございます。







幕間:悲劇「いつかどこかでした会話」




「真田先輩は幸せそうに見えますけどね」
 俺の話を黙って聞いていた後輩は、話の切れ目にそう呟いた。俺は、と訊ねてみても首を捻るばかりで答えらしいものを口にすることは無かった。
「どうだろう……逆に訊きますけど、先輩は幸せなんですか」
「質問に質問で返すんじゃねえ」
 小突きながらそう言うと、長い前髪の下の無表情が僅かに歪む。と言っても変化は些細なもので、付き合い慣れている人間でなければ表情が変わったことには気づかないだろう。
「だって、幸福なんて人それぞれ定義は違いますよ。先輩にとっての幸せって何なんです」
 定義。自分にとっての幸せが何かなど考えたこともなかった。答えに窮する俺を見て、後輩は肩を竦めて笑う。
「ほら。そういうところが駄目なんです」
 駄目って何がだ。
「オメーはどうなんだよ」
「どうとは」
「幸福の定義」
 そうですね、と呟きながら腕を組む。大仰な動作の割に答えが出るのは早かった。
「皆が笑っていてくれたら、俺はそれで幸せです」
 言い切ってから、『皆』の中にちゃんと先輩も入ってますからと付け足される。とりあえず、どうもとだけ言っておいた。
 皆が笑っていてくれたら、か。良くも悪くもこいつらしいなと思う。
「不幸はパターンというか、一応の定型がありますよね」
 貧乏とか、病気とか、と指折り数える。
「何かが足りないと不幸ってことなんでしょうか」
「親がいねえとかか」
「ああ、そういえば活動部は親が死んでたり問題があったりって人多いですよね、俺もそうだし。なんだか不幸の吹き溜まりみたいですね」
「そういうことを笑って言うな」
「だって実際のところ、みんな自分は不幸だーなんて思ってないでしょう」
「お前、両親いねえんだろ」
「だから何です。ちょっと運が悪かっただけですよ」
 軽く言ってのける。乗り越えたのか最初からそうだったのかは知らないが、大した問題じゃないと本気で思っているのは確かなようだった。
「なるほど」
 口ではそう言いながら、腑に落ちないことがあった。ならばこいつの背負う影は、一体何に由来しているのだろう。
「そうだ。知ってます? 喜劇と悲劇の定義」
「喜劇ってぇと、笑える話だろ」
「じゃ、ないんですよ」
 その答えを待っていましたと言わんばかりに指を振る。……影を背負ってるってのは俺の気のせいかもしれないと思えてきた。
「本人が問題を自覚しているのが悲劇で、自覚がないのが喜劇なんです」
「ああ?」
「櫻の園なんかは悲劇に思われがちなんですけど、あれは――」
「待て」
 普段は無口の癖に、珍しく饒舌に喋る口を手で塞ぐ。
「もう少し噛み砕いて話しやがれ」
 顔色ばかりはいつもの通りだったが、視線が明らかに不満を訴えていた。思っていたよりも喋りたがりなのかもしれない。
「要するに――他人から見たら不幸でも、本人が不幸と思わなかったら悲劇にはならないんですよ」
「……へえ」
 意外だったが解らないでもない。
「俺、悲劇って好きじゃないです」
 そりゃ好きな奴は少ないだろう。そう応じると黙って頷いた。

「だから――だから、いつかでいいですから。先輩にとっての幸福の定義、教えて下さいね……」

 そう言う後輩の目は妙に遠くを見るようで、俺は何も答えられなかった。


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