ブロ愚

日々徒然と妄想文

スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
誰一人として望んでいない結末だとしても構わない

後日談、封印の扉のアレ見たら逆に未来に進む気無くすんじゃ……と思わなくもなかった
でもそういうことじゃないんですよね

ちょい展開で悩んでるので8話あげられるとこだけ続きからあげときます
この後どうするかで転の部分がまるで変わってしまうのよな……
しかし流れ的には……でもここで……と悶々としてます
一応全体の流れはあらかじめ考えてあるのですが
流れは変わらないけど中身が大幅に変わるという厄介な部分でして
先出しか後出しかの違いなんですけどうーん……



8-180万秒と少し(9/21-22)


(まぶしい……)
 瞼を擦り、もう見慣れた天井からすっかり明るくなった寮の自室へ目を動かす。視線だけで室内を見回して、居ないのかと溜息をついた。
「っ、え?」
 思考が停止すると共に頬が一気に熱くなる。
 自分が"誰"を探しているのかに気付いてしまった、というより無意識にその人を探してしまった上に居ないことに寂しさを感じてしまったことに居た堪れなくなって、布団の中で頭を抱えた。
 居るわけが無い。居るわけが無いんだ。俺が寝てから何時間経ってるのかわからないし、いくら夜型の人だって眠らない訳じゃない。むしろ居たら驚くべきだろう。そう思う。思う、のに。
 そばにいて欲しかったとか、そんなことを。考えてしまうあたり、どうかしている。
 布団から頭を出し、起き上がる。顔はまだ熱い。鏡を見たら真っ赤なんじゃないだろうか。正直そんな自分の表情は見たくないので、目を逸らすように窓の向こうを見た。
 ベッドから降りて窓の傍に立つ。数日振りの陽光が暖かくて心地良い。嵐が去った後の空はただ青くて、いつもよりずっと遠くの景色が見える気がした。
 たっぷり眠ったからか体が軽い。風邪も完治しているだろう。体を伸ばして、唐突に気づいた事実にあ、と声が漏れ出た。
 ……閉まっていた雨戸が開いている。
 自動的に開閉する訳はないし自分で開けた覚えもない。というか閉めた覚えすらない。でも昨日目を覚ました時には閉まっていた筈だ。ということは、"誰か"が寝込んでいる俺の代わりに閉めて、台風が去ったからとわざわざ開けていったことになる。
 冷めてきたと思った頬が、またじわじわと熱くなってくる。彼だと決まったわけじゃない。他の誰かかもしれない。でも何となく、……そんな気が、する。
 窓枠に触れた。埃の積もっていない箇所を、指先で撫でる。薄く開いた唇が、何かを呟こうとして、言葉にならずに溜息になる。
 これは一体何だろう。訳のわからない感情が自分の中で荒波を起こしている。
 こんな気持ちは……知らない。


「そういや、お前でも泣くことってあるんだなー」
 台風一過の青空も過ぎ去って、とっぷりと日が暮れた頃。夕食はどうしようかなとぼんやりラウンジのテレビを見ながら考えていたら、同じくぼーっとしていた順平が呟いた。
「……は?」
 まだ少し18日のことを引きずってたのに加えて不意打ちというか寝耳に水というか、言われた言葉が理解不能すぎてそんな反応しか返せなかった。
 誰が何だって?
「いやほら、一昨日? 何があったか知らねーけど、お前荒垣先輩にしがみ付いてすげー勢いで泣いてたじゃん」
 …………はぁ? 荒垣先輩に、……なに?
「誰が泣いてたって」
「誰ってお前に決まってんだろ。ごまかそーたって無駄無駄、あれだけ声でかけりゃ聞こえるって」
 照れていると思われたらしく、ニヤニヤ笑いながら小突いてくる。
 いやいや。待て待て待て。
「覚えが無い」
 ここ数年、涙なんか流した記憶は無い。小学生ぐらいの、自分から他人と接点を持とうとしていた頃ならともかく、"今の俺"はもうそこまで感情豊かじゃないし。
 っていうか一昨日って俺寝込んでて意識なかったんじゃなかったか?
 人違いじゃないだろうか。実は泣いていたのは天田だった、とか。……それも無さそうだ。
「まったまたー」
 変わらずニヤニヤ笑う順平の顔をじっと見る。真顔で。
「な、なんだよ。からかわれたからって怒んなよ」
 じっと、見る。
「こっち見んな」
 見つめる。
「ちょ、や、やめろってー」
 じーっ。
「え、え?」
 見る。
「……何、マジで覚えてねえの?」
 伝わったらしい。頷いた。
 この様子だと、順平が言ってることも本当っぽいな。順平は些か配慮が足りないところはあるけど、下らない嘘を捏造するような奴じゃない。夢でも見ていたんじゃないか、と言いたいところだけど。
「荒垣先輩、何か言ってなかったのかよ」
 そう、先輩は。『昨日のことは覚えてるか』と訊いてきた。訊いてきた、のだ。
 だけど俺が否定すると、何も言わなかった。それきりその話はしなかった。なんでとかどうしてとか、当然浮かんでくるはずの疑問も何も。
「なにも……」
 俺も順平も黙り込む。テレビの音だけが俺たちの間を通り抜けていく。やらせの笑い声が更に白々しく聞こえた。
 ようやく何事かを察したらしい順平が、ごくりと息を呑んでから乾いた笑いを浮かべた。
「もしかして俺、余計なこと言った?」
 多分な。


 いっそ夢日記でもつけようか、と一瞬思ったけど書いたり読み返したりする度に憂鬱になりそうだ。却下却下。
 熱を出している間夢を見なかった(覚えてないだけかもしれないけども)からもう悪夢は見ないんじゃないかな、というのは甘い期待にすぎなかったらしい。
 まあ、10年も見続ければ諦めはつく。俺は一生悪夢と上手く付き合っていくしかないんだ、と。嫌だけど仕方ない。病院に行って治せるようなものでもないだろうしな。
 喉の渇きを覚えて部屋に備え付けの冷蔵庫を開ける。ミネラルウォーターを……っと。
「あー……」
 無い。いやあるには有るがボトルの底に申し訳程度、1,2口くらいが残っているに過ぎない。
 そういえばしばらく買い足してなかったな……というか、台風だったし寝込んでたし買い足しに行けるはずが無いなとここ数日の自分の行動を振り返る。
「あ」
 さっきから「あ」としか言ってない。って、そうじゃなくて。
 そういえばここ、自販機有るんだった。水じゃなくてもお茶くらいならあるだろう。お茶なら台所へ行って淹れてもいいんだけど、面倒だからパス。
 小銭を寝間着のポケットに突っ込んで、部屋の扉をそっと開ける。静まり返った深夜の廊下は音がよく響く気がする。と言っても、裸足だから足音も殆どしないんだけど。
 わざわざ着替えるのも面倒だから寝間着のまま、しかも裸足で出てきてしまった。まぁ女の子たちに見つからなければ怒られたりはしないだろうし、3階から降りてこないことを祈っておこう。
 自販機の前に立って、小銭を入れて剛健美茶を選ぶ。ガコンと聞きなれた機械音がしてペットボトルが落ちてきた。
 昼間聞くと何でもない音だけど、真夜中だとかなり響く……というかうるさいな。誰かの安眠を妨害してないといいけど。
 フタを開けて、お茶を喉へ流し込む。冷たさと苦みでようやく、……ようやく、夢から覚めた気がした。
 そこにあった椅子に惰性で座り込んで、ペットボトルの中でゆらゆらと揺れる水面を見つめる。
 タイムリーというか何というか。今日みた夢は、周りと距離を置いて、たった1人で生きていこうと初めて思った日の――"思い出"と呼ぶには苦い、そんな"記憶"の夢だった。
 これからも、こんな痛みを覚えながら生きていかなくちゃいけないのかと愕然として、呆然として、恐怖を覚えて。
 それを避ける手段として、孤独になることを選び。その日を境に、"ぼく"は"俺"になった。
 だけど、――……

「なんだ、お前か」

「っ、え」
 考えに耽っていたからか、扉が開く音にも人が近づいてくる気配にも気づかなかった。
 手元のペットボトルから視線をあげると、いつもよりラフな格好をした荒垣先輩がいた。
 もしかして起こしてしまったんだろうか。先輩の部屋って自販機の真横だし、うるさかったかもしれない。
「そんなとこで何してんだ」
「ちょっと、」
 もごもごと口ごもりながら答えると、思いきり溜息を吐かれた。
「病み上がりが薄着でフラフラしてんじゃねえ。またブッ倒れんぞ」
 ごもっともです。返す言葉もない。




この時点で3000字オーバー。今回6000字近くなりそう


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。